~なぜ歯周病は薬では治らないのか~
歯周病(歯槽膿漏)は慢性の細菌感染症(バイオフィルム感染症)です。「細菌なら殺菌剤や抗菌薬を使えば殺すことができるのでは?」と考えることも当然の発想だと思います。
歯周病が薬で治れば、理想的な治療といえると思いますが、はたしてそれは正しいのでしょうか?
「結論からいえば、歯周病は薬では治りません(残念ですが・・)」
もう少し詳しくいうと、
「歯周病の治療中に薬を一時的に使うことはありますが、それを使えば歯周病が治るという薬は存在しない」となります。
なぜそのような言い回しになるのでしょうか?
そもそも「歯周病が治る」とは
①薬を使用せずとも
②歯ぐきの痛み、腫れ、出血がなく
③骨の痩せが停止して持続している状態
をいうため、薬を使用しなくても歯ぐきが健康な状態を維持している状態を「治った」といいます。
誤解①
「痛みや腫れがない=治っている」とイメージされる方も多いかと思います。歯周病は「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」といわれ、痛みや腫れなどの自覚症状が無くても知らないうちに進行(歯を支えている骨が痩せる)する病気です。
したがって、痛みや腫れがなくても、歯茎の骨の痩せが進んでいる場合は「治っていない」ので油断は禁物です。
誤解②
具体例をあげると、結核(結核菌が原因)は昔は死に至る怖い病気でしたが、現在は抗菌薬の服用で外部から入った「結核菌」を排除することで「薬を飲んで治す」ことが可能な病気の一つになりました。
歯周病(歯周病菌が原因)も細菌が原因ですが、常在菌といってもともと住んでいた細菌が原因なので、そもそも「0」にはできません。そのため外部から入ってきた結核菌のように「薬を飲んだ⇒歯周病菌ゼロ」には残念ながらなりません。
そのため、歯周病は飲み薬で治る病気ではありません。
なぜ歯周病は薬を使用せずに治るのか。。。3つの理由をあげます。
①そもそも歯周病の8割は「歯周基本治療」といって物理的にプラーク(歯垢、バイオフィルム、細菌の塊)を取り除くことで治ることがわかっているため薬を使用する理由がありません。
②歯周病の原因であるプラークは細菌の塊で、表面にはバリア的な「膜(フィルム)」が存在するために、プラーク内部の細菌には抗菌薬は届かないため効果がありません。
ただし歯茎に腫れや痛みがある場合は(血管がある場所が腫れるので)抗菌薬が届くので効果があります。
※抗菌薬は、血流(血管)がある場所でないと届かない、また唾液中の濃度では低すぎて効果が期待できない。
③体の内部(口の中、胃や腸)、表面(皮膚)いたるところにもともと細菌(常在菌)は存在しています。そもそも常在菌が多数を占めるお口の中の細菌を「0」にすることは不可能であり、またその必要もないので一時的に使用する場合はあっても長期間の連用は無駄に終わります。
歯周病治療で薬を使う場面とは?
①痛み・腫れがある時
②外科手術をした時
③どうしても基本的な治療で改善しないタイプの難病性歯周病
これらから歯周病は進行してしまうと自然治癒は不可能です。歯周病治療をした後でも、完治はない病気なので、定期的な病院でのメンテナンスが必ず必要です。
今やネットでたくさんの情報が簡単に見られる時代です。間違った情報もたくさんありますがここスマイル歯科はすべての治療に関して、メリット・デメリットをお伝えした上で納得して頂き、治療スタートしていきます。 yamamoto